〜実践企業人材論〜
        VOL-5『ビジネスの世界、いろいろ』

                 “利益の追求って、組織のルールって?(6)”
 

                      ラポールグループ 代表 渡辺 孝雄

 

以前、私は「ステージ理論」というものをもちだして、組織の段階的な発展プロセスを解説したことがありました。国の発展プロセスなどを見ましても、大方、独裁政治から民主主義政治へ発展的に移行します。企業も同様、創業期・成長期は創業者による独裁経営が主流であり、その後、二代目になると安定期ということもあり、民主的な経営になったりします。


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当然、企業内の組織にも同じことが当てはまるような気がします。つまり、企業の成長とともに組織も連動して成長を遂げるということです。また、そうでなければならないとも言えます。これは成長に伴うライフサイクルのことであり、そこには、一定の法則性をもつ“発展プロセス”が存在していると考えているわけです。そして、その発展プロセスを階段に例え、ステージと称して解説したわけです。

*ステージ理論とは“環境が人を育てる”という考え方に根本を置いている。初期段階ではトップ一人の下、集団が束ねられている。次の段階になると、集団から脱しピラミッドの組織体を編成する。そこには各種規定やマニュアルなどの導入がある。次に、組織規模が拡大し、より機能性を重視し出すと、ISOなどの経営システムを導入する。そのことによって、組織行動の一層の高度化を図る。ちなみに、この高度化を指してステージの高さとしている。そして、ステージの高さに応じて人は育つとしている考え方をステージ理論と呼んでいる。

 

下記のゼロステージから第5ステージは、私が仮説として設定した発展プロセスにおけるステージ理論です。(理論とまでは言えないかもしれませんが)基本的には私自身の経営経験がベースとなっていますので、どの企業においても同じプロセスをたどるとは決めつけませんが、概ね同じような範疇において進行するのではないかと思っています。

   (あくまでも創業者が独りで会社を立ち上げてからの発展形です)

 

ゼロステージ  ・・・1人、2人でやっている自営業、SOHOの事業形態で、まだ組織と呼べるものがなく創業者によるワンマンプレイの領域ですべてが動き出している(個人的想いの行動)

 第1ステージ ・・・5人から10人程度のメンバー構成。やっと集団の行動が取れているが、トップ以外、目的や目標が不明確。かろうじて「報告、連絡、相談」が必要に応じて口頭レベルで行われる程度、本来の組織はまだ存在していない。よって、トップダウンによる統率によって動いている(集団の行動)

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第2ステージ  ・・・10人から20人程度のメンバー構成。依然として社長の考えひとつで全てが運営されているが、現場には社長のその考え方が徐々に浸透しにくくなっている。目標の数字だけがいつも飛びかっていて社長と社員間の想いが離れてしまう。そこで、あわてて統率力を強化するため各種規程やマニュアルなどをつくったり、企業理念を構築したりする。(分散行動)

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第3ステージ  ・・・20人から30人程度のメンバー構成。合議制も一部見られるが依然としてトップダウンの色が強い。やっと右腕的幹部の存在が見られる。規律、秩序に対する制度が導入され運用が始まっている。一応、組織の体を成している。主に管理職には職責を明確にした体制に入る。しかし、行動指針は依然として営業上の数字目標が主体となっている。 (会社行動)

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第4ステージ  ・・・30人から50人程度のメンバー構成。経営計画書は一応、存在している。会社の理念は形骸化 し始めていても社内、対外に表明はされている。日々の業務は目標管理のP−D−C(Plan-Do-Check)が導入され、な んとか回そうと試みている。権限委譲もある程度できている。また、ISOなどの経営システムなども導入がはじ まる。社長はロータリーを始め、各種団体に所属し企業人として社会的な使命や役割を認識し始めている。(目標 管理行動)

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第5ステージ  ・・・50人から80人程度のメンバー構成。経営理念と経営計画書は整合性をもち、社長はその実践において常に組織へ働きかけている。目標管理自体は現場の責任者(管理職)がトップの方針を自力で展開している形となっている。会社の経営行動が数字を超えた理念に帰結している。そろそろ、事業部制は分社化などもこの頃から検討がされていく。そして、後継者問題も経営課題に入る時期。(理念・戦略行動)

 

(注)それぞれのステージには、分りやすくするためあえて組織メンバー数を当てはめました。組織メンバー(量)が増えることで体制(質)を変化させなければならないことを意図したものです。

 

以上は私が考えた組織の発展プロセスです。私自身、創業者なので、上記のステージを意識して活動しているのですが、一進一退が正直なところ現状です。一時はステージ3や4までステージアップできていたのですが、すぐに、脆弱な企業体質もあり、3や2に戻ってしまったりします。順風満帆ということは決してありませんでした。今も、ステージ5を目標として日々経営努力をしているつもりですが、そう簡単ではない。これが実態です。

 

一方、企業の成長と組織の発展プロセスをモデルというものがあります。一般論としては次のようなものがあります。“組織のライフサイクルモデル”と呼ばれるものです。

 

77_組織のライフサイクルモデル
        

組織ライフサイクルモデルとは、組織の規模が大きくなるにつれて1)起業者段階、2)共同体段階、3)公式化段階、4)精巧化段階といった段階を経ることしています。私の分類より端的で分りやすいかもしれません。

 

1)起業者段階

  創業者の独創性や革新性が重視され管理活動は軽視される段階段階です。簡単に言えば強力なリーダーシップが発揮されるが、一方、個人の個性による独裁体制になってしまう。組織が成長を続けるためにはマネジメントのスキルが必要となる。

2)共同体段階

  組織内の諸活動が明確な目的や目標に沿って統合されていく段階。と同時に組織の規模が大きくなるにつれ、権限を委譲し直接トップ゚が指揮せず統制を行える構造を作り出していく必要がある。

3)公式化段階

  職務規則・評価システム、会計制度など様々な規則・手続きが導入され、組織は次第に官僚制的になっていく段階である。官僚的制度が必要となる段階。組織の成長は、「官僚制の逆機能」を打破する必要がある 

4)精巧化段階

  組織が多数の部門に分割し、小規模組織の利点を確保しつつ環境変化に柔軟に対応することが必要となる段階(組織の最終仕上げ段階)。組織の成長へは起業者段階で設定された社会的使命(創業精神、創業理念等)を再度見つめなおしていき、再活性化していく必要がある。

 

もう一つ有名な成長理論があります。組織論としての発展プロセスとして理解してもよいと思い

ますが、主に起業の成長プロセスとしてよく紹介されているものです。それは、グレイナーの「成

長・危機モデル」というものです。 (1972年にハーバード・ビジネス・レヴューに掲載された理論です。)

 

グレイナーの成長・危機モデルは、組織が危機に陥った時に変革・革命を行い乗り越え成長していくモデルである。5つの段階があげられています。

 

(段 階) (組織成長度)   (成長内容)          (危機内容)

第一段階  未熟期      創造性による成長      リーダーシップの危機

第二段階  ↓        指揮系統整備による成長   自主性の危機

第三段階  ↓        権限委譲による成長     コントロールの危機

第四段階  ↓        調整による成長       形式主義の危機

第五段階  成熟期      協働による成長       新たな危機

 

レイナーは組織が成長していく段階でこの5つの成長とそれのともなう5つの危機が不連続に生じると提唱しています。グレイナーモデルの組織の成長を未熟期から成熟期の発展プロセスに応じてそれぞれの現象を示してくれています。

 

このグレイナーモデルによると、企業は1つの成長段階を経ると危機的状況に陥るが、それを乗り越えた組織は、それほど経済的失敗や内部的分裂を起こすともなく4〜 8年間は継続的に成長し、そのパターンを繰り返しながら成長を遂げていくことになると解説しています。確かに私自身、経済的失敗と内部的分裂を起こすことがある種、定期的に訪れていると感じています。

 

 第一段階では、組織の創立期における創造による成長の段階で、経営管理の重点は新製品の生産や販売に置かれることが多い。しかし、会社が成長するにつれて過去のやり方が通用しなくなり、リーダー間の対立が激しくなるため、この段階での危機をリーダーシップの危機と呼んでいるのです。

 

第二段階は指揮による成長とよばれる段階です。指揮的リーダーシップのもとで企業活動の効率化に重点が置かれ、集権的な職能別組織が導入されます。この段階を経て、組織の規模が大きくなつていくが、下位レベルのマネージャーの間で、集権的な組織に対する自立欲求が高まってきます。これを自立の危機と呼んでいます。

 

第三段階は、委譲による成長すなわち権限を委譲した分権化組織をうまく活用する段階です。大きな権限を得たマネージャーは、市場の動きを即座に察知し、それを新製品開発に結びつけることが可能となります。こうして、マネージャーの自立化が進むことになるが、一方、トップマネージャーは統制力を回復するために集権化を図ろうと必死になります。しかし、業務が多岐にわたっているため、集権化は多くの場合失敗するもこれを統制の危機と呼んでいるのです。

 

第四段階は調整による成長の段階と呼ばれ、分権化された構成単位間の調整システムを機能させることで資源の効率的配分を行い成長を図っている状態です。この段階を経るうちに組織は拡大し複雑化していくが、それとともに手続きが問題解決に優先し、革新への勢いが減退してしまう。これを形式主義の危機と言っているのです。

 

最後の第五段階は、協働による成長の段階と呼ばれ、形式主義の危機を乗りこえようとする強い個人相互間の協働が重視される。問題解決やマトリックス組織の採用、マネージャーの教育訓練などによってマネジメントが強化されます。そして、この段階を経て訪れる危機は未知の危機と呼ばれているのです。

 

このグレイナーモデルはあくまでも順調に成長軌道に乗っている企業がぶつかる危機を想定しているように思います。概ね、実感として理解できる素晴らしい理論ですが、全ての企業がたどる段階でもないかもしれません。それであっても、この理論を予め熟知していれば、これらの危機を事前に防げたと思うと、早い段階で勉強しておけばよかったと後悔しています。なぜなら、ご多分にもれず同じ段階を見事にたどっているからです。

 

 

つづく VOL-6『企業の求める人材論』

“利益の追求って、組織のルールって?(7)”